ウルトラマンマスクの研究


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Cタイプマスクの研究



◆研究してみる
67年4月に造型の佐々木明さんが記念品として作ったとされる、成田家と古谷家のウルトラマンのマスク。
佐々木家の分もあったそうですが、現存してません。2つだけが残されています。
古谷さんの方は「お宝探偵団」でお馴染みです。
成田さんの方も、近年の個展に出されて記憶に新しい。
佐々木さんがどのようにそれぞれにマスクをプレゼントしたのかは分かりません。
結果として、古谷さんのマスクはCタイプに近く、成田さんのマスクがゾフィに近い。ぼくはその逆のような印象もあったのですが写真を並べるとすぐに分かります。
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まず、ゾフィと成田家のマスクを重ねてみます。
目の位置がほぼ同じです。成田家の方がややキツイ目つきです。
最大の違いは、唇のエッジです。
ゾフィは面取りがされています(次の画像で、唇の→が面取りした所)。
これがゾフィの唇の特徴で、新マンNGを経て、現存するゾフィとおぼしきマスクに受け継がれています。
ただそのマスクは、正面にだけ面取り部分にパテが盛られています。ヒビが入って直したのかもしれません。


それぞれのマスクの唇を並べてみました。
違いが分かります。
上から、
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Cタイプ。唇の左右の側面が5角形になっています。

ゾフィ。唇のすべてのエッジが面取りされています。

古谷家。Cタイプに近い5角形は左のみ、右は4角形です。

成田家。どちらの側面も4角形。シャープになっています。

成田さんのマスクは、佐々木さんにもらってから自分で手を入れているかもしれません。耳の穴と唇のエッジがやけにシャープです。それに合わせてか目の角度をきつくしたと思われます。
古谷さんのマスクの方が原型から抜きっぱなし、ごつごつした感じで、原型にもっとも近いモールドなのだと思います。
ゾフィ、新マンNG、それをベースにした新マンのすべてのマスク、客演、アトラクのすべてが、同じ血筋と見て良いでしょう。
Cタイプのスーツがどこへ行ったのか分かりません。
おさらいをすると、
ゾフィ(体はAタイプのスーツを流用)
 それを改造して、
サークロラマ「モーレツ!大怪獣戦」のウルトラマン
 それをベースに、体はその模様を型紙を起こして、
新マンNG
 これは体をリペイントして劇中で使っています。

果たして、現存するゾフィとおぼしきマスクは、本物なのか否か。
もう1つ、可能性としては、雛形の項目で記した、後頭部の段差。このマスクにも同じ意味合いで古いウエットスーツ地がマスクの縁に残されていました。
これこそがAタイプのウエットスーツ?
もしトサカを磨いて下から黒い塗料が出て来たら間違いなくゾフィでしょう。
耳の剥げたところ、佐々木さん謹製の樹脂の特徴がありました。銀ラメ入りの樹脂です。ふつうはそんな事はしません。



◆系統立てる
もっとも有名なウルトラマンのスチールはご存じスペシウム光線を発射せんと構えた正面の構図です。
成田さんがウルトラマンの造型にアルカイックスマイル(古代嘲笑)を入れたと言うのは、このマスクです。
B(Aと原型はそう変わらない)タイプは笑っていません。
Aタイプはシワが寄って、結果的に笑っているように見えるので、成田さんはそこにヒントを得たのかもしれません。
後年、宮本武蔵を引き合いに出して、本当に強い人間は戦いに臨んでも恐怖にひきつるどころか、おそらく笑みを漏らしたに違いない、と言う解釈をしました。
もう1つは、ギリシャ彫刻がそうであるからです。彫刻家なので、美の極致とされる要素は外したくなかったのでしょう。
弥勒菩薩は後付です。ファンが、ウルトラマン=仏像、とくに弥勒菩薩を引き合いに出すので、強いて言えばそういう要素もあるだろうと、したのでした。
当然、日本人の感性だからそれで間違いないでしょうが、古谷さんの日本人離れした高い鼻から来る彫りの深さはまさにギリシャ彫刻の要素があった事でしょう。
古谷さんは細面なので、例えば、後になってウルトラマンに入る人の顔が大きいと引っかかります。そこでマスクの縁を削ったり、マスクそのものを広げたりしたようです。
とくに「帰ってきたウルトラマン」は、新規造型でなく、流用だった上に、マスクとウエットスーツを平行、正中に付けてなくて、傾いだ感じになっていて、きくち英一さんがきちんとかぶっても曲がっていました。
新マンの特徴である、左右の目の位置の極端な違いは、実はゾフィからでしたが、スーツの股ぐらを引き上げて履いてない事など、どうもぼくには新マンは初代ほど素敵に見えないのです。がに股なのもいただけない。
それはさておき。

それらの説明をするために、2つのウルトラマンの形状を系統づけてみました。
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まず、Cタイプのグループ。古谷さんの持っているマスクがこれの直系です。製作時期もかなり近いでしょう。
古谷さんのマスクはある機会に間近で見せてもらいました。新マン以降のマスクに見慣れていると、粗雑な迫力と、少し大きな印象です。
左目の下に傷があって、ぼくはこれを「ウルトラマンの泪」と名付けました。「ウルトラマンの泪」は、ビンプロの解散とその後の下積みで苦労した古谷さんの悔し涙だと思っています。
図版、3つ並べた左から、Cタイプ、古谷家のマスク、展示で使っているM1号謹製のマスク。
もちろん微妙にそれぞれ違っています。が、同じ物を目指しています。
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もう1つのグループは、ゾフィです。成田さんが持っているマスクはゾフィに近い印象です。佐々木さんからプレゼントされた後、成田さん自身が手を入れた可能性もあって、耳の臍なぞ、シャープです。唇も古谷さんのマスクよりシャープで、目の位置も同様、成田さん好みにされています。
そしてゾフィを元に流用した新マンへ続きます。
ここでの共通項は、つまり目の角度なんです。
とくに、ゾフィの左目の付け位置がセンターから少し離れた所が新マンでは顕著です。もう佐々木さんが作ってないので製作者の知らぬところではありますが。
余談を加えると、成田さんのマスクはお子さんが幼い頃にかぶって遊んで、落とした事で右目が割れています。セロテープが貼ってありました。また円谷との裁判で、証拠物件のシールが裏面に貼られていました。
ぼくが伺った80~90年は、タバコのヤニで真っ茶色でした。複雑な成田さんの心境が移された感じです。



◆ウルトラマンの口
実はCタイプをレストアするような作業をしています(ベースは客演時期のマスクのレプリカ)。
現存するCタイプは、造型担当の佐々木さんが当時記念に抜いた成田さんと古谷さんの2つ。
さらに、西村さんがゾフィ改造の新マンを持っています。ただ、疑問符がまったくないわけでなくて、もしトサカを磨いて下に黒が見えたら間違いナシ!となりますがここではこれ以上はふれません。
当のCタイプこそ行方不明でありながら、なんとか成田さん、古谷さんのマスクで当時の面影は確認出来ます。
おそらく古谷さんのマスクが原型のそのまま。成田さんの方は目、口、耳の穴などいじっている、と思われます。
西村さんの展示で使われるマスクは、古谷さんのマスク直系なので、かなり当時ぽく再現出来ています。
が、どうしてもしっくり来ないのが、目と口でした。目は難しいです。
手作業の押し出しヒートプレスですから、抜く度にマチマチの形状になります。ダイヤカットのエッジも摩滅します。
そして今回の作業で、なるほど!と思ったのが口でした。

ここでおさらいすると、
ウルトラマンからセブンまで、佐々木さんの造型の中でもっとも苦労したのが、インタビューの回顧で語っていた口の開閉でしょう。
文楽の人形の口を真似た、と何度か佐々木さんが述懐しています。
造型そのものは彫刻家ですから、なんでもないことです。さらっと作ったのかもしれません。さすが神業ですよ。
しかし、彫刻家にとって苦手は加工です。成形も上手くありません。
目のヒートプレスは倉方さんがやったと思われます。
佐々木さんの回顧の中でもう1つは、
セブンが、デザインではアイスラッガーが頭部と一体化しているので外す事に苦労した、と。
つまり、造型的な苦労はまったくないんです。
加工とかギミックが記憶に残っていらっしゃる。

ウルトラマンでは、Aタイプから始まった口の開閉が、セブンでもなされていて、それがまったく劇中では生かされなかった。
あるいは佐々木さんは放映をそうきちんと見てなくて、口の開閉は使われているものだと思っている可能性もあります。
当時で言えば、サンダーバードの人形の口がそうです。
正確には下唇を動かそうとしているわけですが、文楽人形と同じで、喋ったり、表情を出したりする演出です。
ラテックス成形のAタイプは、そのギミックの失敗で頬にシワが寄った事が大きな顔の特徴へとつながりました。
Bタイプの口も以前ふれたように唇をいったん外して開閉しようとして上手く行かずかパテ埋めしてあります。
そして、Cタイプ。
どうやらこれも唇を外して、ギミックを仕掛けて、上手く行かなくてパテ埋めしたようです。画像を見ていけば成る程と感じます。
原型と違う形状は、口の出っ張りと深み、角度が微妙に違う。
センターで分割ですからそもそも唇の正面はパテ埋めしないでは済みませんが、とくに口角は思った以上に深いのでした。


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・ウルトラマンAタイプ試着時(A00と呼んでいます)の口。加工の痕がありありと。まだエッジが綺麗に出ています。





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・劇中のAタイプの口。13本の後期でA03と呼んでいます。なにをどうするとこんなシワが寄るのかこれこそ奇跡の微笑みです。





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・Bタイプ、撮影終了後の「月刊マガジン」特写の口。口の穴を埋めています。口の周囲、唇の下のライン、取り外して付け直し、パテ埋めした痕です。




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・Cタイプ、劇中から。正面の左右の五角形が斜め下を向き、口角に近い左右が斜め上を向いています。





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・Cタイプの唇の下の、やや深い彫りが分かります。細く、カットしたラインが残っています。





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・右側からのショット。口角の不自然な切り込み、反対側は、一部ウレタンの切れ端かパテの名残か、口穴を塞いでいます。





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・ゾフィを前に倒れたウルトラマンの口、天地逆さにしてみました。くり抜いて取り付けた感じがよく分かります。





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・テレビで紹介された古谷さんのマスク。Cタイプのもっとも粘土原型に近いピュアな状態と思います。唇はそうシャープでありません。




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・劇中のCタイプ。目と同様、ダイヤカットのイメージ。








ウルトラマンCタイプの
繰り返しになりますが、上で使った画像をもう一度考えます。
Cタイプとそれの粘土原型にもっとも近い古谷さんのマスク、さらに、古谷マスクをベースにした展示用。
展示用も古谷さんのマスクも、Cタイプと大きく違うのは目の輪郭です。
型はAタイプからずっと同じ物と聞きます。
すると、少しずつ手を加えているのか、雌型となる木枠の輪郭が広がっていくのか、それは不明ながら、A、B、Cと、ともかく目の輪郭が異なるので、違いは意識しないといけなくなります。
作者が意図したか無意識か考えるのも面白いのですが、依頼された以上は納品が条件ですから、もたもたしていられません。ちなみに駄文を書いているのはポリパテが硬化する間の待ち時間の間です。

で、目の輪郭を考証します。
幸い、Cタイプの有名なスチールとテレビで紹介された古谷マスクのカメラ位置がほぼ同じで重ねる事が可能になりました。
目を残して古谷マスクを除きます。
目の位置がずいぶん違います。
Cタイプは左目が右上より上に付いています。しかもセンターから少し離れて。
次に、Cタイプの目の輪郭を明確にするため目をくり抜きました。
白くするとよく分かります。1センチくらい、段差があります。
最後に古谷マスクの目を合わせて、重ねてみます。
左目は一回り、右目はなんと2回り、違いました。
これでは展示用がいくら精巧にCタイプを再現していてもしっくり来ないです。
そんなわけで、やり始めたらやっぱり目の押し型に手間がかかっています。

・まず比較のために写真を選びます。撮影で使ったCタイプ。古谷さんが持っている67年4月に作られたマスク。これが粘土原型そのままの形だと思われます。続いて、古谷マスクの流れを汲んだ展示用。Cタイプと比較するとこの段階で目が小さいかなと感じます。右端が今回レストアしたマスクです。
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・Cタイプに古谷マスクを重ねます。目を残してマスクを除きます。すると目の位置の違いが分かります。とくに左目は5ミリ以上ズレています。







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・Cタイプの目をくり抜いて下地を白くしました。右目と左目の段差が上が3ミリ、下が7ミリ違います。これに古谷マスクの目を重ねます。位置は白目に合わせます。すると差異が明確になります。左目で1回り、右目は2回り違います。サイズと位置の違いがよく分かりました。









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