永遠のウルトラマン 古谷敏


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永遠のウルトラマン 古谷敏

2015年03月28日イベント用小冊子の原稿です。

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永遠のウルトラマン、古谷敏!

伊福部昭百年紀のメンバーが開催した新年会に、宝田明、中野昭慶、古谷敏、薩摩剣八郎、各氏が集まった。
ぼくは古谷さんと同じテーブルに居たが、後半になって場所を移して古谷さんの先輩格、宝田明さんと少し話をした。
小学校へ入ってすぐ、67年の夏休み。
母親に連れられて大井町の東宝で「キングコングの逆襲」を観た。併映は「長篇怪獣映画ウルトラマン」。
宝田さん主演の海外合作作品で予算も潤沢。円谷英二の特撮の妙も極まれり、お馴染みの東宝俳優が勢揃いして豪華絢爛、本多猪四郎監督の演出も成熟の域にあった。
宝田さんはヒロインと恋人関係にあったものの、彼女と同じアメリカ人の艦長にどうやらヒロインはなびいてしまって子供ながら苦い味を感じたものでした。
しかし、その日のぼくの楽しみは初めてカラーで動くウルトラマンを見る事にあった(その頃は白黒テレビがふつうだった)。
「キングコングの逆襲」にドキドキしつつも心は揺れる。ああ、早くウルトラマンが見たい!
「長篇怪獣映画ウルトラマン」が始まった。その眩しさ。
科特隊の活躍よりも、ぼくは怪獣が次々と出る事に歓喜した。満場の子供みんながそうだ。怪獣出現の度にウルトラマンが登場する。真打ち登場ですよ。ウルトラマンは誰よりもカッコイイ。興奮はピークです。
見終わった子供たち、会場のあちこちでみんなスペシウム光線のポーズ。
視聴率が20%を軽く超えていた文字通り怪物番組と謳われた「ウルトラマン」は惜しまれつつ4月に放映が終わっていた。
その夏の映画。古谷さんは「ウルトラセブン」の撮影に入っていた頃だろうか。
テレビの同じ枠は東映の「キャプテンウルトラ」が放映されていた。子供のぼくには宇宙空間はなんだか閉鎖的で、キャプテンが変身しないのがもどかしかった。おそらくどんな番組が来ても「ウルトラマン」のパワーにかなわなかったろう。
「ウルトラマン」はその秋に早くも再放送があって、怪獣ブームは続いた。ブームの白眉が「長篇怪獣映画ウルトラマン」だったのだ。
つまりその興行の主役は宝田さんであり、古谷さんだった。
その事を、宝田さんへ告げた。
「そう、古谷くんが。そうだったの」宝田さん、我が事のように感慨深く微笑んだ。
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戦後の東宝は自社で俳優を育てるニューフェイス制度を採っていた。俳優養成学校で生徒を募集して学ばせ、選ばれた者が晴れてデビューとなる。
宝田さんは6期生。古谷さんは最後の15期に当たる。
宝田さんが常に言うには、「もし、古谷くんがあと5年早く生まれていたら。映画界が斜陽になる前に古谷くんが出ていたら、ぼくの跡を継いだに違いない」と。
事実、古谷さんは宝田さんに憧れて東宝を選んだ。
ウルトラマンの前傾姿勢は「理由なき反抗」のジェームス・ディーンを真似たものだそうだが、東宝は邦画の中でもっともハリウッド作品に近い雰囲気をもっていた。
とくに歌って踊れる宝田さんは少年だった古谷さんの目標となった。
古谷さんは、東宝映画の端役に始まり、円谷プロでレギュラー、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」(アマギ隊員)で子供のアイドルになる。
俳優を辞めてビンプロモーションを興して怪獣ショーをやったのは子供への感謝があったように思う。
俳優であるのに顔を隠して演じたウルトラマン。
何度も辞めようと唇を噛みしめた。
マスクの中で流す悔し涙。危険な撮影と疲労困憊。こんなのは自分が目指したものと違う!
そんな折り、撮影所へ向かうバスに乗って来た子供らが興奮してウルトラマンの話を始めた。古谷青年の砕けつつある心がどれだけ救われたか。
よし、子供の期待に応えなきゃ。
感受性豊かな、世に出たばかりの俳優の決意。スタッフの知らないところであったが。
俳優でありながら特撮スタッフと行動をともにしてヒーローや怪獣へ入るスーツアクター(当時は怪獣役者と呼んでいた)は特異な存在だ。
まず、身体能力が買われる。
ゴジラへ入った中島春雄さん、仮面ライダーを演じた大野剣友会、あるいはJACの面々。
古谷さんが彼らと違う点は、たまたまスタイルが良い事で選ばれてしまったのだ。
ウルトラマンはバック転をしたり派手に見栄を斬らない。
遙か彼方の星から来た謎の宇宙人。
人間のために戦ってくれるが、それは人智が及ばない時にのみ。そして心ならずも暴れた怪獣へは優しさを寄せた。
古谷さんの気持ちが同化したかのようにウルトラマンは微笑んで、怪獣を見逃した。
悪には徹底して戦う神秘の宇宙人ウルトラマン。
東宝で育った古谷さんの凛とした佇まいに、ウルトラマンの真骨頂がある。
高視聴率を稼いだ原動力は、魅力あふれる毎回の怪獣が一つと、もう一つは、格好良くて美しいウルトラマンそのものだった。
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撮影終盤。ウルトラマンが終わっても古谷さんをテレビに出して!と要望が局へ殺到する。
それと言うのも、遡れば1クール(13本)過ぎにTBSの計らいで「仮面を脱いだウルトラマン」と称して番組宣伝や雑誌で、古谷さんの素顔が紹介されていた。以来、ファンは激増した。
「ウルトラセブン」でアマギ隊員が生まれたのはファンの声に応じたもの。
ウルトラ警備隊のキャスティングで一番先に決まったのが古谷さんだった。それを証明するエピソードを挙げれば、特撮美術のデザイナー成田亨がデザインしたウルトラ警備隊は古谷さんををモデルに描いたものである。
近年、成田さんを中心とした特撮美術の回顧展が三鷹の美術館で開かれた。古谷さん、ふらっと覗きに行った。そこで成田さんの奥さんと再会する。
古谷さんが俳優を辞めてビンプロが好スタートを切っていた頃、成田さんが美術をやった「突撃!ヒューマン」の舞台を担当した。
古谷さんは成田さんと再会する。
成田さんもモ・ブルと言うデザイン企画会社を興していた。
平成バブルの時、ビンプロが解散する。
人生山があれば谷がある。古谷さんは表舞台から姿を消した。
そこからどれだけ苦労と努力を重ねたかは想像がつかない。
ある時、昔の俳優仲間に誘われて本を出す運びとなった。「ウルトラマンになった男」(小学館 09年)は評判をとる。
古谷さんはまた陽の目を浴びだした。
円谷プロと長く版権問題で頭を悩ませたまま逝った成田さんの絵を、古谷さんは万感の思いで見に出かける。
懐かしい人に会いたかったのだ。
昨今、現代美術の視点で怪獣デザインが見直され、各地で成田さんの展覧会が企画されている。
「ウルトラマンになった男」には、若き才能のぶつかり合いが赤裸々に書かれてあった。成田さんが読んだらどんなに喜んだだろう。
生前、成田さんの話によく古谷さんが出た。
「敏のやつ、シンナーが苦手で」。
成田さんにすれば10歳下の古谷さんは弟のようだ。夢多き若い俳優が複雑な顔で怪獣に扮する。
ケムール人は成田さんの会心のデザインになった。
古谷さんのウエットスーツの着付け。体の模様にこだわってさらに付け加える。新聞紙でマスキングしてスプレーを吹く。そりゃ臭くてたまらないですよ。
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成田さんの述懐。
「敏ちゃんは8頭身だった。8頭身はたしかに見た目は良いが彫刻としてならウルトラマンのマスクをかぶった7頭身が理想です。7頭身というのはギリシャ彫刻がそうなんです」。
なるほど、動く彫刻という次第。
成田さんが古谷さんに惚れ込む理由がそこにあった。
たしかにウルトラ警備隊が並ぶと、ヘルメットをかぶって7頭身となる古谷さんが一番カッコイイ。
長い手足。古谷さんには華がある。
東宝生粋の品格が見え隠れする。
71歳の古谷さんが今でもウルトラマン当時の体重をキープしているのは驚きです。これぞプライドでなくてなんであろうか。
ウルトラマンに続くウルトラセブンも、成田さんは古谷さんが演じるものと信じていたが、古谷さんの信念が勝った。今度は顔を出す芝居を。
成田さんに失意はあったものの、ウルトラ警備隊の隊員服のデザインは、古谷さんの苦労をねぎらうものだったと思う。真っ先に見せたのだそうだ。
成田さんのお宅へ初めて行った時。
ウルトラマンのマスクを見せてもらった。
先生、これ、国宝ですよ! 
成田さんはその言葉が嬉しかったようで、著作の中である人に国宝と言われたと誇らしげに書いていた。
国宝は古谷家にもう1つ。
ウルトラマンは苦労を続けた成田さんもと古谷さんを、長く、ただ笑って見つめて来た。
ウルトラマンを作ったのは、成田さんの武蔵美の後輩にあたる佐々木明さん。成田さんのデザインを具現化した人。
その佐々木さんが当時、撮影終了の記念に、2つのウルトラマンを作って、成田さんと古谷さんへそれぞれプレゼントしたのだ。
ウルトラマンは、まず古谷さんのライフマスクを石膏で取って、その上に粘土を盛りつけた。
ウルトラマンの顔が西洋人のように立体的なのは、中の古谷さんの面立ちの彫りが深いため。そのまま反映された。
高い鼻。面長だが目鼻の小作りなまとまり。少し長い下顎。目の位置。
どこをとっても、ウルトラマンの造型は古谷さんの顔から始まっている。
古谷さんと会う機会が増えたので、時に古谷さんを観察させていただいている。まったく失礼な話(笑)。
でもぼくには、古谷さんはウルトラマンそのものなので、仕方がない。
肩の線、腰の線、動く古谷さんがいちいち魅力的。「彼」に、どんなデザインをしてみようか。
少しだけ成田さんの気持ちが分かる。

去年のウルトラワンマンショー。舞台裏のお手伝いをさせてもらった。
ぼくらはビンプロの人間になったつもりで物販を担当。
舞台の古谷さんはやはり素敵です。冒頭、客席後方から歌いながらの登場だ。
やられた! そうだ、古谷さんはショーのプロだ。
71歳のタップダンス。東宝で学んだステップ。歌は正直、上手くはないが心がこもっている。
「ウルトラマンになった男」の朗読。涙も洟も出ていた。それが古谷さんらしくて、心を打たれた。男が裸になってすべてを見せた。
猫背のぼくは最近、古谷さんを見倣って、少しだけ姿勢を正す。すぐ戻ってしまうのだけど。
ぼくは古谷さんの懐刀(ふところがたな)になっているアニメーション監督の松園公さんに、古谷さんを紹介してもらった。
正確に言うと、80年代に一度、古谷さんを電話取材した事があった。
ビンプロに所属していた経験があった西村祐次さんを介して。
西村さんは特撮ファンにはご存じM1号という玩具メーカーを主宰している。
ビンプロが全盛だったせいか昔話よりこれから先が大事な感じだった。
ウルトラマンをやって俳優を辞めようと思っていたんだ。と、けっこうさばさば答えた。
これは絶対にそうだ思うのだけど、今の古谷さんの方がウルトラマンを大事に思っているはず。
去年、映画祭の舞台で70歳の古谷さんがウルトラマンを演じた。
すごいなぁ。
もし、70代の古谷さんがテレビか映画でウルトラマンを演じたら、ギネスに載せられるんじゃないか?
黒部進さんの老ハヤタ単体で、もう一度古谷さんのウルトラマンがあっても良いと思う。  
今でもぼくは6歳か7歳の気持ちで、胸を高鳴らせている。
永遠のウルトラマン、古谷敏!      
                              (ヤマダ・マサミ)

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古谷敏出演リスト

※はノンクレジット出演、ウィキペディア参照の下
映画作品
モスラ(1961年、本多猪四郎監督 東宝) - 記者 ※
世界大戦争(1961年、松林宗恵監督 東宝) - 笠置丸船員 ※
妖星ゴラス(1962年、本多猪四郎監督 東宝) - 南極基地の記者 ※
吼えろ脱獄囚(1962年、福田純監督 東宝) - 健
ニッポン無責任時代(1962年、古澤憲吾監督 東宝) - マドリッドの客 ※
キングコング対ゴジラ(1962年、本多猪四郎監督 東宝) - 自衛隊通信員 ※
その場所に女ありて(1962年、鈴木英夫 東宝) -西銀広告社員
若い季節(1962年、古澤憲吾監督 東宝)
天国と地獄(1963年、黒澤明監督 東宝) - 横浜駅の駅員 ※
海底軍艦(1963年、本多猪四郎監督 東宝) - 陸上自衛隊員 ※
今日もわれ大空にあり(1964年、古澤憲吾監督 東宝) - パイロット
モスラ対ゴジラ(1964年 本多猪四郎監督) - 警官 、インファント島原住民※
君も出世ができる(1964年、須川栄三監督 東宝) - 東和観光社員 ※
宇宙大怪獣ドゴラ(1964年、本多猪四郎監督 東宝) - 自衛隊員 ※
三大怪獣 地球最大の決戦(1964年、本多猪四郎監督 東宝) - 調査隊員、松本の避難民、展望台の観光客、避難誘導する警官 [4役]
太平洋奇跡の作戦 キスカ(1965年 丸山誠治監督) - キスカ島の参謀 ※
フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年、本多猪四郎監督 東宝) - 自衛隊員、岡山の群集 ※
大冒険(1965年、古澤憲吾監督 東宝) - 週刊トップ記者、クラブ・サハラの客、ホテルメリケンのボーイ [3役] ※
怪獣大戦争(1965年、本多猪四郎監督 東宝)X星人※
エレキの若大将(1965年、岩内克己監督 東宝) 田能久の客※
日本一のゴリガン男(1966年、古澤憲吾監督 東宝) - バー「WATER」のボーイ ※
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966年、本多猪四郎監督 東宝) - 海上保安部職員 ※
お嫁においで(1966年、本多猪四郎監督 東宝) - 保の友達、東京相互タクシーの運転手 [2役] ※
長篇怪獣映画ウルトラマン(1967年、円谷一監督 東宝)ウルトラマン
東映パレード ウルトラセブン空間X脱出(1968年、円谷一監督 円谷プロ)アマギ隊員
実相寺昭雄監督作品ウルトラマン(1979年、実相寺昭雄監督 松竹)ウルトラマン
ウルトラマン怪獣大決戦(1979年、宍倉徳子、飯島敏宏、円谷一監督 松竹)
ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発(2008年、河崎実監督 松竹) - 高峰参謀
大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(2009年、坂本浩一監督 ワーナー・ブラザーズ) - 光の国の住人
地球防衛ガールズP9(2011年、河崎実監督) - ヤナギ
インターミッション[10]。(2013年、樋口尚文監督) - 映画館の観客
地球防衛未亡人(2014年、河崎実監督) - キャスター

テレビ作品
ウルトラQ(1966年、円谷プロ / TBS)
 第4話「マンモスフラワー」 - 皇居の野次馬 ※
 第19話「2020年の挑戦」 - 誘拐怪人ケムール人
 第20話「海底原人ラゴン」 - 海底原人ラゴン
 第24話「ゴーガの像」 - 密輸団員・蜂(岩倉孫一郎の部下)※
ウルトラマン(1966年 - 1967年、円谷プロ / TBS) - ウルトラマン
 第10話「謎の恐竜基地」(1966年) - ホテルの従業員 ※
 第39話「さらばウルトラマン」(1967年) - ゾフィ
愛妻くん 第23話「妻をめとらば」(1966年、TBS / 日活)
ウルトラセブン(1967年 - 1968年、円谷プロ / TBS) - アマギ隊員
怪奇大作戦 第10話「死を呼ぶ電波」(1968年、円谷プロ / TBS) - 全国運送経理課長・村木秋彦
戦え! マイティジャック 第21話「亡霊の仮面をはぎとれ! 」(1968年、円谷プロ / CX) - アップルの医師
チャンス! 第4話「夢と欲望の彼方」(2010年、NHK)
ウルトラゾーン 第12話「ラゴンの恩返し」(2011年、円谷プロ / tvk) - 昭夫


バラエティ出演
ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生(1966年7月10日放送、TBS) - ウルトラマン
ヤング720(1966年11月4日放送 TBS)
開運!なんでも鑑定団(2012年2月21日放送 テレビ東京)

ラジオ出演
爆笑問題の日曜サンデー 『ウルトラマン特集』(2009年7月19日放送 TBSラジオ)
大竹まこと ゴールデンラジオ!(2010年1月20日生放送 文化放送)

オリジナル作品
ウルトラセブン超百科(2008年 CS / ファミリー劇場)

舞台作品
朗読劇『銀河鉄道の夜』(2010年 東京・永田町 星陵会館) - カムパネルラの父親
朗読劇『星の王子さま』(2010年 東京・永田町 星陵会館) - 主演 サン = テグジュペリ、パイロット
 ※いずれも、スターワルツ作品 清水マリ、西塔紅美、水垣洋子、土屋嘉男と共演
殺陣
突撃! ヒューマン!!(1972年、日本テレビ / ユニオン映画)※ビンプロモーションとして

著書
『ウルトラマンになった男』(小学館)2009年12月21日発売