神変


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ウルトラマン神変を作る。

DSC0338.gifホームページをつくったのは自分史を振り返って、今までやってきた事とこれからやれる事を探っていく試みであったが、同時に、この不況下でこれがセールスに繋がればという一縷の望みがありました。
本当に切実な毎日です。
ライターもモデラーも底辺の仕事なので、出版社やメーカーが手元不如意となると立場が弱い順に斬られてしまいます。しかし生きて行かねばなりません。
頑張っている諸氏、なんとか、切り抜けていきましょう。それしかありませんよ。
そんなわけで、ヤフオクなどで知り合った方へホームページを紹介するとちゃんと見て下さって、あまつさえ仕事をくれたりします。
有り難い事です。
お陰様で、4つ目の個人依頼が取れそうです。腕を買われるのは職人冥利に尽きます。
現在、2人目の依頼者の作業が終わりました。
絵兎展へ出した青いウサギが気に入ってもらえて、そのテイストでウルトラマンをとの注文でした。
スケッチを描いて見てもらい、原型を何度かチェックしてもらううちに、さて色をどうしようか?となりました。
なんせ造型物は絵と違って、感覚的に、視覚的に、また物理的に情報量が増えて、環境によっても雰囲気が変わります。
これ、青くしない方が良いですよねぇと、依頼者と話します。
そこで頭を過ぎったのは、<ウルトラマン神変>でした。
「ウルトラマン」のデザイナー成田亨が、「ウルトラマンGグレート」の時に、バンダイに依頼されて描いた絵が<ウルトラマン神変>です。
その絵の画像を以前、人に教えてもらい、またしばらくしてどこかで見かけて、脳裏に焼き付いていました。
たしか個展でも見た記憶があるんですが、個展へ行くと頭がぶっ飛んでしまって、なにを見たのか覚えていない事もあるくらいです。
幼稚園の時に以来、憧れの人の絵ですからねぇ。
本当はもっとウルトラ怪獣を作りたいのです。
今回そんな成り行きでネットで探してみるとホームページがあって、そこで<ウルトラマン神変>の絵が公開されていた。
MY博物館
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90年代バブルの頃、バンダイは羽振りがよくて「ウルトラマン」は映像ソフトも売れたので、成田さんを贔屓にしてレーザーディスクやビデオの絵を頼んでいた。
バンダイのそれらの企画は、安井尚志さんのものだと思う。
安井さんは朝日ソノラマで成田さんの画集も企画・編集しているので「グレート」の話もトントン拍子で進んだのでしょう。
ただ、成田さんと円谷プロとの関係があるので、簡単に済むものでない。
要するに、版権の明示と具体的な等分、そして過去の問題の整理に尽きるのですが、30年経ってまた怪獣が商売になる以上は、デザインの発案者なればこそ謝礼が欲しいのはしごく当然の人間の感覚と思うわけです。ですが、そこは企業と個人。個人の方が弱い立場になるんです。
成田さんは円谷プロの初期のウルトラ怪獣やヒーロー、メカニズムのヒット作のほとんどをデザインした。
いちばん分かっているのは玩具屋さんだった。成田さんの新しいウルトラ怪獣が展開出来れば、とても魅力ある商品になったはず。
「宇宙船」に登場して以降の成田さんは、怪獣マニアや成田ファンと出会った事でそれまでの映像の仕事とは別に、怪獣ものの個展をやったり彫刻や絵の販売をやるようになって、怪獣ともう一度向き合っている時期でした。
成田さんの本によると、「グレート」の打ち合わせの時に版権を話題にしたら、円谷の担当者は右に左に席を立った。
そんな経緯だから、新しいウルトラマンと言っても、最初から決定版の絵を描く事は出来ない。
その頃、ゲーム関連で描いた絵があった。1つは画集になった。
もう1つはアルバムに残された<新怪獣>と言うシリーズがそれだと思う。
そのアルバムをご自宅で見せてもらった時、成田さんは勝手に使われるわけに行かないので発表が出来ないと仰った。
想像するに「グレート」用に依頼された際、成田さんは、己のウルトラマンへ対する自信と愛着と見栄と意地があって、簡単に新しいウルトラマンを作る意志はなかったのではないか?
契約書が交わせて、利を得て、始めて描けたように思う。
それでもバンダイに頼まれた以上、絵を提出しなければならないので、苦渋の末描いたのが<神変>でなかろうか。
黒いラインに黄金の肌。
ウルトラマン以上のウルトラマンは、もはやウルトラマンでしかない。
あえて描くならこういう形になる。
たしかに神々しい。
成田さんの心の葛藤や喜怒哀楽や芸術家の誇りが見え隠れする。
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ちなみ、この黄金の肌、これもぼくの勝手な想像なのだけど。タバコのヤニだと思う。
成田家には、「ウルトラマン」撮影直後に造型の佐々木明さんから贈られたウルトラマンのマスクがある。初めて成田さんのお宅へ行った際に、ぼくは「これ、国宝ですよ!」と興奮して言った。
成田さんは「そんなことを言ってくれるのはあなただけですよ」と言ってくれた。
手に取らせてもらえたので、裏を見るとシールが貼ってある。なんですか?と聞くと、裁判の時の証拠の整理番号だと言われた。
ウルトラマンは創造の喜びだけでなく、遺憾の念も成田さんは持ち合わせる事になった。
マスクがあまりに綺麗な黄金なので、どういう色を塗ったんですか?と聞いたら意外や意外、タバコのヤニが付いたんですよ、と苦笑されたのだ。
生活の中の様々な感情の色がウルトラマンに付けられた。
だから<神変>のウルトラマンは成田さん自身のようでもある。

ところでそのようにぼくは個人的な思いを馳せるのだが、今回の依頼者が学校の先生をされているので、最初のインスピレーションとして、先生自身とウルトラマンがダブったわけです。
「ウルトラマン」の7話「バラージの青い石」で、ノアの神と呼ばれる像が紹介される。5千年前、アララト山の麓で大洪水から人類を救った宇宙人がウルトラマンと瓜2つの姿をして像にされていた。
その事からムラマツキャップは「ウルトラマンは平和のためになくてはならない大切な神」だと言った。
人間から神とされたウルトラマン。
同時にウルトラマンは、自ら起こした事故とはいえハヤタを死なせ、その命を救うために我が身を捧げた寛大な気持ちがある。
最終回でもウルトラマンはハヤタの若さと人間の寿命の短さにこだわっていた。
彼は幼い命へ対して包容力をもち、かといって大仰ではなく、一緒に戦おうというスタンスだった。
そこが、なんというか、生徒に対する先生と重なる。
依頼者のSさんが生徒たちへ、さぁ一緒に歩もう!と両手で招いている姿をウルトラマンに託してみた次第です。
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ウルトラマン自体は、フォルモです。30センチなので、芯は入れてなくむくにしました。足と台座には真鍮の棒がL字に入っています。
彫刻的な人体でなくて、中へ入った古谷敏さんの体型をモデルにしています。それはもう、そういうものでないと、意味がないと(笑)。
粘土を乾燥させて削っては盛っての繰り返し、磨いてモールドを入れて色を塗る。
ウルトラマンの顔は、3つある顔のBタイプを基準にして、AとCの良い所を入れています。折衷とかミックスという事でなくて、ウルトラマンらしい顔を目指しました。
とくにラテックスのシワの寄ってないマスクが良い感じなので、最初はそれを狙いながら、好みで唇をまとめていくとBタイプになってきます。
ただ、頬に影が出来るのは避けてCタイプのようなふくよかさにしました。
体のラインは、アウトラインを入れてから少し浮き立たせた感じで、およそ0,1〜0,4ミリ程度の段差を付けました。色を塗ると、リキテックスは厚みが出るのでちょうどよくなります。
色は、体色の黄金を、
バーチメント(薄い黄土色)
を下地に塗り、
ブライトゴールド(やや濃い金)
ブライトシルバー(銀)
を混ぜたものを塗っています。
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黒いラインは、
ウルトラマリンブルーと黒を混ぜたもので下地を塗り、
ブルシャンブルー
で上塗りし、
アクラブルーバイオレット
でアクセントにしています。
黒いラインをそのまま黒で塗っても、絵と違って立体なので格好がつかず、色が欲しいなと思って、画材売り場で悩んで本能的に選んだ色です。
成田さんの好きそうな色を考えました。
台座は、<神変>の絵で使われた背景の色をイメージにして、宇宙、空、海の色を混ぜて、少しだけパールを入れています。
カラータイマーは、デザイン上はないので、そのままを踏襲。
たしかに、ラインが綺麗なんですね。こうして見ると。改めて、新しいウルトラマンの模索である気がします。
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このウルトラマンは個人に頼まれたものでイベントで使ったり商品にするものではありません。個人蔵になります。
でもこういう機会を得たのはファン冥利に尽きます。
昭和の時代を築いた作家の業績に少しふれて、良い仕事をさせていただきました。
それで<神変>の絵を所蔵されている方へ報告したら、かえって喜んでいただけたのも幸いでした。