紋次郎3


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雑感


(再録)

木枯らし紋次郎 09-04-27

9151.jpgオフなので気が抜けて、昨日も午後3時まで時代劇専門チャンネルを見ていて、それから寝た。起きたら夜の9時。ヤバイ生活(笑)。
こんなんじゃ出かけられない。去年の夏に登録したご近所サークルもすっかり幽霊会員になっているので、そろそろ整理されそう。人が多いところだから、なんだか気兼ねしてしまうのです。それと時間が合わない。
しょうがないよなぁ。
他人へ合わせるのが苦手になっている。
だからって社会との距離の置き方を厭世的にしているわけではありません。歯車が合わないだけのつもりなんですが。
う~む。ゴールデンウイークもなんの予定もなく。
出来たら仕事を進めたいかなと。

昨日はヤフオクで怪獣の人形を落札。つい、出来心だ。これはもうしょうがない。癖みたいなものだ。
そういえば、木枯らし紋次郎がいつも長い楊子を咥えていて、誰ともなくそれはどういう意味があるのか尋ねるが、決まって紋次郎はこういう。「これは癖ってもんで」。

紋次郎は、生まれてすぐ間引きされる運命にあった。
飢饉のあった時代。貧しい農家の、必要のない子供は生まれた瞬間、間引きされた。
農家は次男以降は家を継げない。次男以降は結婚は出来なくて、ただの働き手にされた。娘は町に売られた。
紋次郎の生まれた上州三日月村は蒟蒻が産地だった。
間引きされる赤ちゃんは、蒟蒻を呑まされる。恐ろしい話だ。しかしそれは昨今の鬼母とは違って、家族が生き残るための苦肉の策なのだ。
紋次郎を救ったのは姉だった。姉は村中に、赤ちゃんが生まれた、今度の子は家で育てる子だと言い回って、親は間引きする事が出来ず、紋次郎は死を免れた。
それから10歳になって紋次郎は家を出る。家族は離散した。
渡世の道へ入った紋次郎は強く生き抜いた。恐い物はなかったが、空腹に喘いでも、蒟蒻だけは受け付けなかった。
ある時、姉が嫁いだ先で不幸の死を遂げた事を知る。
紋次郎は長い間記憶の彼方にある姉の姿を思い続けて旅を続ける。
もしかしたら姉に逢えるかもしれない(亡くなったはずなのに)。
そんな思いで生きている。死をおそれはしない。ただ、こんな人生でも、もし生きていれば少しは良い事があるかも知れない。それがなんなのかは分からないが。
紋次郎は、不幸な女と出会うと、「あっしには関わり合いのねぇことで」と言って背を向ける。それでも関わってしまう。自分を助けてくれた姉への恩返しのつもりなのだろうか。
そんな紋次郎がおまじないのように手放せないのが、あの長い楊子なのだ。

楊子には忘れられない思い出があった。
珍しく旅先で知り合った心を許せる老人がいて、そばに孫の女の子がいた。
幼い紋次郎が記憶に残る姉の、その時の年齢に女の子は重なる。その子が、老人のつくる竹細工のあまりをもらって楊子にして咥えていた。
楊子を笛のようにして、ひゅーと吹く。唇と楊子の隙間から息を出して、たぶん楊子の長さに合わせて空気が振動して音が出るのだ。
女の子の吹く楊子の音は綺麗な音色だが、紋次郎が吹くともの悲しい木枯らしの音色になる。
ひゅー、ひゅー。
それから10年も経っただろうか。紋次郎は老人がとうに亡くなった事を知る。やがて疲れ切った女郎と知り合う。その女が楊子を咥えていた。
紋次郎の問いに、女は、その子は死んだんだ。あたしじゃないよ。と言う。そのうち喧嘩に巻き込まれれて女は命を落とす。
だが紋次郎は、彼女があの女の子だという事を知っていた。女はすっかり汚れた自分を紋次郎に知られたくなかったのだ。
「おめえさんの事は思い出しもしねえが、忘れもしやせん」。
そう言う紋次郎の目は慈愛に満ちて女を看取る。
行く当てのない旅がまた始まる。

紋次郎の癖にはちゃんとした理由があったのだ。誰の癖にも理由はあるだろう。
死を畏れぬ渡世人が10歳くらいの女の子の姿を忘れられず、姉への思いを思い続け、もしかすると長い楊子を咥える事で、思い出したくもない過去を唯一つなぎ止めているのかも、と考える。
長くなってしまったけど、男にはなんだか下らないように見えても大事なものがある。
そんな話。