紋次郎その2


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雑感

木枯らし紋次郎 その2

(再録)

09-10-12 木枯らし紋次郎

11452.jpg連休最終日のメインイベントは、ぼく的にはハイビジョン版の「木枯らし紋次郎」だった。いえスミマセン、根がオタクなものだから。
本当はぼくだってイルミネーションの美しく見えるどこかで夜通し楽しく遊んでいたいんですよ。あいにく連休だろうが仕事もやっていて。いや嘘だ、前々から楽しみにしていたのですよ。
チャンネルは、時代劇専門チャンネル。朝と夜の9時から。
「木枯らし紋次郎」は、ご存じのように長い爪楊枝を口にくわえて、「あっしには関わり合いのないことで」とニヒルに去って行く中村敦夫の代表作である。
一方で、正確には、「市川崑劇場 木枯らし紋次郎」というタイトルであることから分かるように、市川崑が監修した映画並みの佳作揃いのテレビシリーズでもある。
72年の製作で、途中で製作協力をしていた大映が倒産する。
映画が斜陽になり、テレビの時代が来た中であったが、高度成長期が終わって制作費は減っていた。そんな中で時代劇の火を消させまいと京都のスタッフが底力を見せたのが本作といえる。
なぜスタッフはそこまで力を見せたか?
それまでの東映調と言われる時代劇は歌舞伎の影響が強くて綺麗な殺陣でチャンバラを見せた。映画スターが出るのでストーリーは勧善懲悪。要するにいかにも型にはめた映画らしい世界観であった。
「木枯らし紋次郎」は、あえて格好の良くない事をやった。旅烏がたいそうな刀をもっているはずもなく、つばぜり合いなどやれば刃が折れる。だから、切っ先を突いて相手を殺した。ほとんど生きるか死ぬかの立ち回りだった。そこが地味ながらもリアルだった。
紋次郎は真っ黒に汚れた三度笠で足袋は繕われていた。着物を器用に縫う場面もよく出てくる。そうやって見栄えの良くない姿で世の中を渡っていく。
なんのため?
なんのためか、分からない。ただ、惜しくもない命ではあっても、もしかしたらそんな生き様にも必要としてくれる誰かと会えるかもしれない。

貧しい農家に生まれた紋次郎は口減らしをされる運命にあった。体を張って止めた優しい姉の存在がまぶたに焼き付いている。
紋次郎の育った上州ではこんにゃくが名産だった。口減らしは赤子のノドへこんにゃくを詰まらせる。だから紋次郎はこんにゃくだけは食えない。どんなに腹を空かせていても。
姉に似た女を助ける事もあれば、事件へ巻き込まれる事もある。
話は多彩で、毎回飽きる事がない。
途中、主演の中村敦夫が撮影中の怪我で1クール分休止(1季節13本分)。そしてまた再開して、紋次郎の人生観や中村敦夫のクールな名演に人気はうなぎ登り。
当時の主婦は、土曜の晩は、化粧を直してテレビの前へ正座して待ったという。
子供たちの間ではさすがに土曜とはいえ夜10時に見れる人も多くはないはずなのに、週明けの話題は紋次郎だった。
番組は、事実上の、続編、新作が作られた。
ただ、「新・木枯らし紋次郎」の方は東京12チャンネル製作でコンセプトも違うため(影のある女性と紋次郎の関係が要になっている)、<市川崑劇場>と銘打たれた初期シリーズが、「木枯らし紋次郎」の醍醐味と言える。
以下、ある掲示板へ書き込んだいくつかの再録。

歌舞伎役者のような見栄や白塗りのメイクで勧善懲悪を描く時代劇が多かった中で、びっくりするほど無骨で、ぎこちなくて、正義なんてどこにあるんだかわからなくて、生きるために朝露で舌を潤すような、かといって生々しいわけでなく、どこかに夢があって、ちょっとカッコイイ。
紋次郎という生き方を、子供の頃は分からなかったけど、大人になって、共感というか、灯台の灯りのよう頼って懐いてしまう自分がいる事に驚いた。
オープニングで、川を行く紋次郎の歩き方が、大好きです。

小学4年か5年くらいでたまに見ていた番組でした。
遠足で、誰かがその辺の草の茎を楊子にして咥えて歩いていたら転んで喉へ突き刺さって、それ以来、我が校では咥え楊子は禁止になりました。
30年ぶりに見る「紋次郎」はたくさんの発見があって刮目しました。
黒ずんだ三度笠、ボロぎれの着物にほつれた足袋。
学もなく家族もすでになく、重ねた苦労を振り切るかのように前へ前へ進んでいく紋次郎は、そんな姿なのに、素敵でした。
高潔な人で、眩しい。
関わりたくないと言いながら、関わってしまう徳のようなものが、自分にもあったらと思います。

市川崑の美意識や、貧しくても、蹴られても生きて行く人のたくましさ、それとなによりも70年代の日本の原風景(山、川、森、土)を時代劇の背景に焼き付けたところに惹かれます。
(略)
ぼくにとって「木枯らし紋次郎」は、市川崑と中村敦夫がすべてなのです。

紋次郎は貧乏の中で死と隣り合わせで育って、10歳で村を出たから、 ちゃんとした躾や教養なんて得られなかったかも知れない。
どんぶり飯をかきこむのは、身の危険を避けるためで、酒や女遊びも そのため、やらないわけだが、決して下品に見えない。
すっと立ち上がって、銭をおき、何事もなかったかのように、風のように去って行く。
でもあの、真面目な顔で、手先だけ必死に動かして食べる様が、ちょっと可愛い。


LinkIcon木枯らし紋次郎 09-04-27