ウルトラマンを作った


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ホビージャパン1999年 

<抜粋>

LINGLINC−61 5月号第61回  平成ウルトラマンを作った男たち

bjui5.jpgついに待望の『ガメラ3邪神覚醒』が公開された。重厚で見応え充分、誰もが感嘆の声を上げる怪獣映画が完成した。世界レベルに到達した特撮、魅力あふれる俳優や怪獣の存在感はとても一言で言い尽くせるものではない。すべての関係者の努力とセンスに敬意を示します。やはり怪獣映画は日本製だ!
一方、テレビの『ウルトラマンガイア』もバージョンアップされ、映画『T・D&G 超時空の大決戦』もガメラと時を同じくして公開された。適材適所にそれぞれの特撮作品が措かれて世はまさに百花繚乱のにぎわいだ。そのブレイク状態の特撮界で、微力ながらも“話題”を発信しようと、ロフトプラスワンでトークライブを行った。今回はその豪華な模様から。合わせて『ガイア』原田・佐川組と『セブン』満留組のルポをお届けしよう。

ロフトプラスワン/平成ウルトラマンをつくった男たち

10年ほど前、『ウルトラマン』(66年)の制作背景を群像劇にした『ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の船』が放映された(89年/原作は実相寺昭雄)。思い起こせば初代から数えて今年は33年目に当たり、一ファンとして現場に入ったスタッフがいまや第一線で活躍する時代となった。その喜びと、さらなるスタッフの発奮を期待して、今回のトークライブはあえて“平成ウルトラマンを作った男たち”と題した。スタッフと視聴者の垣根をとっぱらって同じ時間と空間を共有し、平成のこの時代に生きる我々みんなで“星の林に月の船”を夢見たいと思ったからだ。
この日のために、ロフトプラスワンの斉藤友里子プロデューサーは足繁くコミケットやワンフェスに通ってビラを配ってくれた(こころよく協力してくれた海洋堂の福富陽子さんにも感謝)。BBSにも情報を流して反響も大きかった。その努力の甲斐あって、当日は大勢のお客さんが集まってくれた。

7時30分。地下2階の文字通りアングラな会場が期待の熱気に包まれる。控え室から窓越しに覗くと観客の興奮の鼓動が今にも聞こえてきそうだ。
斉藤女史の前説でまず筆者が呼ばれ今回の主旨を説明する。壇上に上がると120人の目が集中するので死にそうに緊張するのだが、どの目もウルトラマン好きの“おともだち”の目になっている。
そう思うと気が楽になってくる。
続いて開田あや・裕治夫妻、切通理作さんを招く。4人が語るそれぞれのウルトラ感。
開田夫妻は、いつもビルトの取材に同行しているので同じものを見ているのだが、あやさんは女性の目でスーツアクターへの熱い思いを語り、裕治さんは絵描きの目でものを見ている
。切通さんは『朝まで生テレビ』に何度も出ているメジャーな論客だ。サブカルチャーというくくりの中でウルトラマンを論じるには適任だと思っていた。現在『COMIC BOX』誌でティガ・ダイナ本を作っているという。

笈田さんも満留さんも本番前に緊張を隠せないでいたので、みんなしてアルコールの力を借りた。そうはいっても2人はふだんは大勢のスタッフの前でしゃべっているので実は筆者が一番不慣れであるのだが。3人が自分の持ち作品の宣伝をかね自己紹介していく。
笈田さんは『ガイア』を、小中さんは映画『T・D&G』を、満留さんは『セブン』を。自分の仕事をセールスするのもプロの仕事である。その口で伝え、その目と耳でお客さんの反応を確かめることはこれからの時代に必要だ。
かつて小中さんは、横浜博の映像を撮っているとき『月刊アスキー』で取材した。10年経って、ウルトラマンを演出する小中さんに再会できると思ってみなかったから感慨深い。
満留さんは小中組の助監督にいた経緯があり、小中さんと知己であるスチールカメラの斉藤純二くんに紹介された。現場の取材がスムーズにいったのは、満留さんが窓口になってくれたからだ。
笈田さんとは、同じデスクワークの立場として取材を離れてもウルトラ談義に花が咲く。3人とも同じ三十代の優秀な人材だ。彼らの応援をこういった舞台でできることが誇らしく思う。『ホビージャパン』で続けた連載の成果でもある。

せっかくだから挨拶だけと言うことになり、鵜川さん、脚本の右田昌万さんとともに登場(こんなアバウトなところがロフトらしい)。
右田さんはいきなり、『セブン』の硫黄人間を演じてくれるものだから場内は爆笑、やんやの声が飛ぶ。
『ゴジラアイランド』でX星人ランデスを演じていた鵜川さんは、『HJリミックス』で取材したことがあった。そのときのスナップをモニターに映す。妖艶な流し目の顔に会場から「おお」とため息が。
俳優さんはファンと交流をもつ機会があまりないようだ。「あたしなんか出ても……」と遠慮していた鵜川さん、会場に大勢いた鵜川さんのファンの大歓声に驚きの笑顔が生まれる。「役柄、気が強いように見えるんですけど、本当はそうでもないんですよ」とはにかむ笑顔、澄んだつぶらな瞳は素敵でした。

壇上で帽子をかぶっているのは髪の毛がぼさぼさのため。すかさずお客さんから「取ってみて!」と声がかかり、サッと取ってサッとかぶるアドリブ芸を披露。お茶目ぶりを発揮。
ロマンスに縁がないのかの問いに、「我夢は、いまのところもてないんですが、量子力学の平行宇宙という概念の中では何十人ものガールフレンドがいるかもしれません。ということを、小中監督の映画で勉強しました」と、真顔で答える。
これは受けに受けて、小中さんも「そんなことを勉強してたのか」と合いの手を入れる。吉岡さんの素顔に触れて、この日新たに我夢ファンになった人も多いのではないか。

そのうち笈田VS満留論争が始まった。撮影前に青写真を描く背広組の思惑と、実際にそれをこなさなければならない現場組のスケジュールの熾烈なせめぎあいは、それぞれが正しい主張ということが第3者にもよくわかる。だから白熱する。すかさず小中さんが間に入る。「居酒屋ではいつもこうなんですよ」。
アッと言う間の4時間だ。会場はノーサイドで沸いた。たまには羽目を外してさわぐのもいいだろう。スタッフもお客さんも翌日からまたそれぞれの仕事が待っているのだから。夜中の別のイベントのためセッティングが変わり、夢のようなひとときが幕を閉じる。
打ち上げをしに焼き肉屋に寄った。会場に来ていて客席から聞き役に徹していた脚本担当の長谷川圭一、川上英幸、古怒田健志、大西信介、各氏らも交えて祝杯を挙げる。
今度は、脚本家に語ったもらおう。あの人もあの人も呼びたい。怪獣はわれわれの文化だ。そしてこの日本には若きクリエーターがあふれている。これからも、本誌では彼らを応援していきたいし、語ることも文化の礎になるのなら筆者は息が続く限り有能なスタッフをこの会場に招きたい。
すべての皆さん、お疲れさまでした。願わくば、星の林に月の船を浮かべて夢を見よう、いつまでも……。